四月の風

君に会えた四月の風

あれから5年経ちました。勝手にこの5年の岡村ちゃんを振り返ってみる。

f:id:sakurakanade:20181026100619j:image

あれから5年だ。

あれからと言うのは、「代官山で僕と握手!(仮称)」、そう、岡村ちゃんとの夢の握手会から。

 

赤紙がきて戦争に行き、戦死の通知もきて数年、もう二度と会えないと思っていたあの人が帰ってきた。

2011年、私にとっての岡村靖幸はそういう存在だった。不謹慎と言われようが、大げさでもなんでもなく、そういう思いだった。

だから、2013年はまだその感覚を引きずっていた。

今観ておかないと、次に会えるのはいつになるかわからない。

実際ツアー当日まで、そのステージに登場するのか半信半疑の状態が、相当長く続いた。

 

そんな時に発表になった握手会。

ワンピースを買い、アクセサリーを買い、美容院に行き、ネイルにも行き、プレゼントも用意し、ファンレターも書いて…。

あの当時思いつくことは全てやった。やりつくして代官山蔦屋に行った。

この時の私は、岡村靖幸を好きになったあの「10代の自分」の感情で動いていたんだと思う。

行くまでの道のりと、帰宅の道、どちらも全く記憶にない。

ただ、蔦屋に入った瞬間からの記憶があまりにも鮮明で胸が苦しくなる。

特に、もうすぐ握手の順番がまわってくる直前、岡村靖幸が目の前にあらわれた時から握手が終わるまでの数分間は、まるで映画のフィルムが頭の一番敏感な場所に貼りつけられたかのように憶えている。

それは岡村靖幸がことのほか素敵な姿だったから。

あの時交わした会話と手の感触は私の一生の宝物だし、あの時の岡村靖幸が私史上一番カッコいいと思っている。

(そして昨日より今日、今日より明日の岡村が最高だ、とも相変わらず思っているし、信じている)

 

これは何度も言っていることだが、あの握手会で私にとっての岡村に対して抱いていたさまざまな感情はいったんチャラになった。

そしてそのまっさらな状態に幸福を何百倍も上乗せしてプレゼントしてくれた。

生きていると、こんなにも良いことがおきるんだ、と心から驚いた瞬間だった。

故郷の震災から2年、まだそう思えることが存在する、そのことに感謝した。

 

あの握手会から5年。

岡村靖幸は順調に、穏やかに時を重ねていっている。

以下wikiを貼らせていただくが、この他に2016年、「オトナの!フェス」「いとうせいこうフェス」に出演。

雑誌の連載、ラジオのレギュラー出演も継続中。

 

 

2013年10月30日発売の木村カエラのアルバム「ROCKS」にカバー曲「TAKE ON ME」(演奏、編曲、プロデュース)に参加。

2013年12月18日発売の「大貫妙子トリビュートアルバム」に「岡村靖幸坂本龍一」名義で「都会」(ボーカル、編曲、プロデュース)で参加。

2013年12月18日発売のカーネーション・トリビュート「なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?」で「学校で何おそわってんの」(ボーカル、編曲、プロデュース」で参加。

 

2014年1月29日から「ビバナミダ(スペース☆ダンディ盤)」が iTunes StoreAmazon.comレコチョク、moraなど国内外の主要配信サイトより世界一斉配信。

2014年4月2日、シングル「愛はおしゃれじゃない」リリース。Base Ball Bear小出祐介 & 漫画家 久保ミツロウとのトリプルコラボレーション。6月には(フジテレビ) 久保みねヒャダこじらせナイトにて「岡村ちゃんがやってくるSP」2週連続放送。

2014年8月30日、スペースシャワー主催の夏フェス「SWEET LOVE SHOWER」出演。

2014年9月13日、氣志團万博2014 に参加。

2014年11月2日、早稲田大学学園祭「4限に君とまちあわせ」出演。

2014年11月12日、シングル「彼氏になって優しくなって」リリース、初パフォーマンスは SMAP×SMAP 「S・LIVE」でSMAPと共演。

2014年11月19日から「岡村靖幸 LIVE TOUR 2014 『ファイヤー』」3カ所4公演。追加1公演。

 

2015年4月26日から 全国ツアー「岡村靖幸 LIVE TOUR 2015『This is my life』」10カ所11公演。

2015年9月2日  「ラブメッセージ」発売。「映画 みんな!エスパーだよ!」主題歌 

2015年10月31日からツアー「岡村靖幸 2015 FALL~WINTER TOUR 『愛の意味』」3カ所4公演。追加1カ所1公演。

 

2016年4月9日からツアー「岡村靖幸2016 SPRING tour『幸福』」12カ所14公演。

2016年11月25日からツアー「岡村靖幸2016 FALL~WINTERtour『運命』」4カ所5公演。

 

2017年2017年4月15日からツアー「岡村靖幸2017 SPRINGツアー『ROMANCE』」13カ所14公演。

2017年9月17日「氣志團万博2017」に出演。

2017年11月3日からツアー「岡村靖幸2017 FALL~WINTER TOUR『レッド』」4カ所5公演。

2017年10月18日  DAOKOとのコラボシングル「ステップアップLOVE」発売。テレビアニメ「血界戦線 & BEYOND」エンディングテーマ。

通常盤Bには岡村の新曲「忘らんないよ」(映画「We Love Television?」主題歌)を収録。 

2017年11月17日、テレビ朝日(ANN系列)ミュージックステーションに初出演、DAOKOとのコラボシングル「ステップアップLOVE」をTV初披露。

 

2018年4月14日から全国ツアー「岡村靖幸2018 SPRINGツアー『マキャベリン』」16カ所17公演。

2018年6月30日、カーネーション (バンド)結成35周年記念ライブ「35年目のカーネーション 『SUNSET MONSTERS』」にゲストとして参加。

2018年7月16日、ap bank fes'18に出演。

2018年8月12日、NHK おやすみ日本 眠いいね!のvol.20にゲストとして出演]

2018年8月29日 KICK THE CAN CREWのシングル『住所feat. 岡村靖幸』にKREVA、LITTLE、MCU (ラッパー) と共に作詞、ボーカルとして参加

2018年10月5日、TBS系の情報番組「王様のブランチ」のテーマソングとして「少年サタデー」を書き下ろしたことを明らかにした。当楽曲は6日の放送から使用されている。

 

そして明日はYUKIちゃんとの対バンin武道館だ。

1996年、生まれて初めて生の岡村靖幸を観たのが武道館だった。だからなおのこと感慨深い。

そして11月にはせっちゃんが発起人となってのチャリティーライブへの参加も決定している。

元々求められる人だった岡村靖幸が、そのオファーを受けて仕事をする様子を数多く見ることができているのが近年の特徴かもしれない。

求められる岡村を見るということは、何よりも嬉しい。

「健やかに粛々と」「信頼と技術」をもって働く岡村靖幸、素敵じゃないか。

 

 

 

2018年秋、音楽の神様ありがとう 椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」

f:id:sakurakanade:20181002174016j:image

椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」特設サイト

児玉裕一監督曰く、「自分自身と孤独に闘い続ける獣。その生き様を垣間見てしまったときの瞬間が、ヤバさが、しっかりとこの映像に刻まれたと思います」。
 
うっすらとその繋がりは感じていたものの、実際こうして目で見、耳で聴くと、椎名林檎嬢の宮本浩次に対するリスペクト具合がダダ漏れしている、そう思いませんか?
 
有働さんが新キャスターとして登場したNEWS ZERO、そのテーマソングが‪椎名林檎‬と「或る詩人」ということだけが公表されていた昨日、

(このあらかじめ発表されていたコメントがまた良かった!)

椎名林檎、新曲が『news zero』新テーマ曲に決定。初共演アーティストは10/1の放送で明らかに (2018/09/27) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

蓋を開ければそれが‪宮本浩次‬だった喜び。その喜びはMVを観てさらに倍。
椎名林檎と宮本浩次-獣ゆく細道 - YouTube 
 
どうです。
まずいきなりの「宮本さん、歌うめぇーーーー!」ではないでしょうか。
人の歌を歌うと、その歌の上手さが超絶際立つ男、宮本浩次
もうNHKのThe Coversでそんなことはわかっていましたが、その頭で「わかっていた」状態のさらに上をいく今回の歌唱力に度肝を抜かれました。
歌詞がまた、完全に林檎嬢の宮本リスペクトの歌詞であり、林檎嬢独特の歌詞のリズムの乗せ方を何の違和感もなく歌っているところがもの凄い。激しい自主練を思い浮かべるとともに、こういう真摯に自分に与えられた歌をきっちり歌いこなすところが大好きでございます。
 
もう歌だけでこっちはべろんべろんですが、着物着てるからね、今回。
 
殺す気か?
 
完全に袈裟懸けでざっくりとヤラレてしまいました。
スーツ、着物、髭、髪の毛くしゃくしゃ、怪しい踊り…。
またELEVENPLAYが周りで踊ると、宮本さんの踊りが完全に成立するところが最高です。
さすが椎名林檎、そしてさすが児玉監督。わかってはる、よくわかってはる…。

完璧に独自の世界観を持つ二人が、お互い遠慮なく世界観の純度を保ちながらその世界を出し合うと、こんな凄いものが出来上がるのですね。二人の声の親和性の高さが、中和することなく、この作品を見事に成り立たせています。
 企画、映像、演奏、久しぶりに何もかもが揃ったカッコいい作品を拝見することができました。ヤラれました。完敗です。

スカパラとのコラボがアナウンスされたばかりだというのに、もうこんな喜びを与えられるなんて2018年秋、ありがとう、音楽の神様。

 

現在シングルランキング第一位!

獣ゆく細道

獣ゆく細道

 

「嘘の木」フランシス・ハーディング

 

嘘の木

嘘の木

 


この作品には、なんと多くのことが描かれていることか。
宗教と科学。
種の起源」。
学問に関する男女差別。(実は学問だけに限ったことではない)

ファンタジーだという。
この作品がファンタジーとして誕生していることにまず驚く。
そしてこの本が少年少女が読むそのコーナーに置かれているという意義を考える。
私がこの本を図書館で見つけた場所も「ティーンズコーナー」であった。

昨年、読売新聞の読書委員である宮部みゆきさんが、ベスト3としてあげた一冊である。
横道にそれるが、私は宮部みゆきのファンだ。
どんなジャンルを書いても完成度が高い。面白い。同時代に生まれて良かったと思わせてくれる作家のうちの一人である。
そして、これほど多作であるのに読書委員って…。一度彼女の頭の中をのぞいてみたいし、バカみたいな望みだが、一緒に本を読んでみたい。
優れた作家であり、優れた読み手である彼女が選んだ本ということで、その題名は常に頭の片隅にあった。そうでなければ図書館のティーンズコーナーにあるこの本と出会うことが難しかったと思う。

ファンタジーというよりは、主人公が父親の不慮の死の謎を果敢に解いていくミステリーと
言ったほうがわかりやすいかもしれない。ファンタジー部分は「嘘の木」に関してだけであるから。
しかし、冒頭にも書いたとおり、この作品からのメッセージ量の多さには圧倒される。
ファンタジーの核である「嘘の木」の描写、それにまつわる様々な出来事の面白さ。
しかし、一番感じ取ったことは、女性が生きていくこと、学びたいことを学ぶというあたりまえのことがどんなに大変なことか、先人たちのたくましい行動の一つ一つの気の遠くなるような積み重なりが、今の女性たちにどれだけ勇気と可能性を与えているかということだ。

優れた文学というのはジャンル分けの必要がない。
一作品に置かれた机の抽斗の数は無限であるし、読者の心を打つ部分は読み手の数だけ存在する。

学ぶことのできる環境にいるならば、それを怠ってはもったいない。
そしてティーンズの本棚にあるからといって、それを「大人」が読まないのも、もったいない。

エレカシのオリジナルアルバム全部聴き直しが非常に有意義だったことについて

異常気象ばかりが続いたこの夏、みなさんはいかがお過ごしだったでしょうか。
長いお盆休みもありながら、夏バテで何もできなかった私が「やった」二つのこと。
一つが、ドラマ「シャーロック」をシーズン1から4まで一気に観たこと。
中学生の頃、シャーロック・ホームズに傾倒し、立派なシャーロキアンになるぞと心に誓ったわりに、今では「赤毛同盟ってどんな話だっけ?」と、え、そこから?のレベルになり下がっている状態。
そんな私でも血沸き肉躍る12話でございました。
特にシーズン2のアイリーン・アドラーには魅了されました。
カンバーバッチは言わずもがな、といったところでしょうか。シャーロックが放送され始めた頃に、あれほど騒がれた理由がやっとわかりました。

さてもう一つの私の夏の思い出は、エレファントカシマシのオリジナルアルバム全23枚を一枚目から順番に聴き直ししたことです。
昨年、ファンになったばかりの頃、どうやら「浮世の夢」はなかなか手に入らないということを知り、手に入るまで時間がかかりそうなので一番新しいアルバムからゆっくり聴いていくか、と遡り形式でアルバムを聴いていきました。
(結局「浮世の夢」だけはいまだ手に入らず、取り寄せたレンタルという形で聴くこととなりました)
それはそれで、非常に刺激的な体験であったわけですが、今回は友人がエレカシを聴き始めた、しかも一枚目から順番に、ということを知り、そういえば順番にはまだ聴いていなかったな、と私も便乗して聴き始めました。

結論を申し上げますと、一ヶ月かかりましたが、大変有意義な時間となりました。
ファンになって一年半、主に音源を聴く、ライブに行くことに重点を置いてエレカシを学んでまいりましたので、昨年より幾分エレカシの30年を知ることができている気はいたします。
これほどまでに心境の変化があからさまに音にあらわれるバンドを私は他に知りません。
今回は特にレーベルを意識して聴き直しまして、会社が変わるたびに切り替えをはかるその気持ちが音にダイレクトに反映されるところに「エレカシは、それ自体が一つの生き物である」という感想をもちました。
もちろん宮本浩次その人の持つ感情の起伏に左右されるところも大きい気がしますが、その感情を受け止めて音を再構築していくこと30年、やろうと思ってやれる年月の長さではないです。一枚一枚、もっと売れたい、もっと俺たちの音楽をやりたい、という積年の想いがオリジナルアルバムの歴史にきちんと刻み込まれています。かっこいいです、とても。

Walkmanが新しくなり、今まで聴こえなかった音まで聴こえるようになり、単純にサウンド自体の進化もしっかり感じとることができました。
今現在のエレカシの音が一番好きですが、どうやら私は東芝EMI期が恐ろしく好きということも判明いたしました。
「人をダメにするソファー」というものがあるじゃないですか。あの感じで「私をダメにする曲」というものがあるとしたら、私にとってはEMI期の曲だな、ということが自覚できて面白かったです。リアルタイムであの頃ファンになっていたら、私はどうなっていたことか…。

先日、意を決して、この一年半でエレカシに費やした金額というものを計算してみました。
音源、映像、雑誌、コンサート、グッズetc.
いったいどこにそんなお金が隠れていましたか?と我が身に何度も問うほどにつぎ込んでおりました。初期投資、甚だしい。だって、エレT以外に服買ってないもん、自分。
社会人として、どうなの?と思う反面、一片の悔いもなし!
むしろ勤労意欲の現実逃避部分の全てを今はエレカシが担ってくれております。

費やした分、まだ観ていない、もしくは1度しか観ていない映像作品がたんまりございます。
オリジナルアルバムの聴き直しも終わり、機は熟した!ということで会社の昼休みは映像作品鑑賞にあてたいと思います。
ということで、さっそく今週からこちらを拝見しております。

 

復活の野音 2013.9.15 日比谷野外大音楽堂 [DVD]

復活の野音 2013.9.15 日比谷野外大音楽堂 [DVD]

 

レーベルがこれほど変わっても、私にとってエレファントカシマシというバンドの根幹の太さを感じる要因は、やはり日比谷野外音楽堂という活動の大きな柱があるからかな、と思ったりしているところです。
「なからん」を観て震えております。一度は生で聴きたいです。

KICK THE CAN CREW“住所 feat. 岡村靖幸”MV解禁!

KICK THE CAN CREW 「住所 feat. 岡村靖幸」Music Video - YouTube

発売に先駆けて、MVが本日解禁となりました。雑誌の表紙に収まるように軽めにデンスする君が愛おしい…。

それと同時に、蔦谷さんのツイートがまた凄かった。

 

DAOKOちゃんとのステップアップLOVEの時も、あぁ岡村ちゃんをだいすきな人たちが作り上げた作品だ!と感動したけれど、今回はまたそれとは違った「この人と仕事をしたい」と人に思わせる岡村靖幸というものを強く感じることができました。そして、それが過去の岡村靖幸ではなく、今現在の岡村靖幸がしっかり求められているのが嬉しいし、もっと言えばこれからの岡村靖幸の仕事というものがますます楽しみになる、そんな将来的な明るさを感じることができました。

 

 

 

 

さて、明日はこちら。

おやすみ日本 - NHK総合

和製プリンスとの紹介がまたNHKらしいし、かわいい写真を使ってくれて、ほんとありがとう❤️と思っております。

さてさて何を歌うのか、何を語るのか。昼寝をして備えたいと思います。

 

 

「夫・車谷長吉」高橋順子

 

 

夫・車谷長吉

夫・車谷長吉

 

 


先日借りた「人生の救い」を図書館に返しにいったら、眼の前にこの本があらわれた。
どうやら読めと言っているらしい、車谷長吉、その人が。

 

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

 

 

書いたものがすべてだから、遺骨はゴミとしてゴミ袋に捨ててくれ

まるで車谷長吉を看取るために連れ添ったような、妻であり詩人である高橋順子が書く姿は
既に存在する作品を、より生々しく、濃密なものとして感じさせてくれる。

熱烈なる、といっても恋愛のそれというより、車谷の生き様そのものを煮詰めた絵具で描いたような熱烈な絵手紙から始まるこの二人の交際。
そこからの22年間の二人の生活は、他人が入り込めないような長い二人だけの旅路を見るよう。


「自分を追い詰めてゆくと、長吉の息苦しさと息を合わせているような気になってしまうのだ」


解凍した生のイカを丸のまま飲み込み、誤嚥性窒息死。
死後二日目、からからに乾いたイカの軟骨が1本。何かに生まれ変わったような。

二匹の虎が一つ屋根の下に共存したかのような緊張感。生半可な気持ちでは読めない本だった。

「車谷長吉の人生相談 人生の救い」

 

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

 

「人間としてこの世に生まれてきたことには救いはない」という吉田兼好の言葉を人生の指針として生きてきた人に、人生相談をしようと思うか?
けなしているのではない。全く新しい、というか唯一無二の人生相談を読んで、おったまげているだけである。
人生相談殺し。
同じく人生相談をやっていた中島らもに、今すぐにでもすがりたくなる。

朝日新聞土曜版「悩みのるつぼ」を再構成したこの本、その名も「人生の救い」。先にこの本を読んで私が出した結果を言うが、人生に救いはない。
なんたる人生相談。相談する意味があるのかどうかも曖昧である。
回答者は車谷長吉。そう「赤目四十八瀧心中未遂」。
私はこの「赤目四十八瀧心中未遂」が非常に好きだ。あまりに好きなので、後半軽く飛ばし読みをし、また数年経ったらじっくり読みなおそうと思って楽しみにしているくらい好きだ。そろそろ読まねば。

 

 

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

 

ということで、あの作品を書いた車谷さんは、どんな人生相談の回答を出すのだろうという興味本位で読んだが、そういう軽い気持ちはすぐにバッサリと袈裟懸けでやられる。
私がこの本で学んだことは、土手の散歩はいいらしいということ。
基本的に相談に答えていない。いや、いるのかな。いるのかもしれないけれど、なんかもう殺されているの、相談が。
という気持ちで文庫本解説までたどり着いたら、大好きな万城目学が同じような感想を持たれており、非常にほっとしている。
この本の一番の救いの箇所である。

この本を読んだら、とにかく外に出たくなる。
外の空気を吸いたくなる。そして散歩に出たくなる。
内なる精神からの脱出をはかりたくなっているのだな、きっと。
こんな人生相談初めてだ。
一読の価値、大いにあり。