四月の風

君に会えた四月の風

「車谷長吉の人生相談 人生の救い」

 

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫)

 

「人間としてこの世に生まれてきたことには救いはない」という吉田兼好の言葉を人生の指針として生きてきた人に、人生相談をしようと思うか?
けなしているのではない。全く新しい、というか唯一無二の人生相談を読んで、おったまげているだけである。
人生相談殺し。
同じく人生相談をやっていた中島らもに、今すぐにでもすがりたくなる。

朝日新聞土曜版「悩みのるつぼ」を再構成したこの本、その名も「人生の救い」。先にこの本を読んで私が出した結果を言うが、人生に救いはない。
なんたる人生相談。相談する意味があるのかどうかも曖昧である。
回答者は車谷長吉。そう「赤目四十八瀧心中未遂」。
私はこの「赤目四十八瀧心中未遂」が非常に好きだ。あまりに好きなので、後半軽く飛ばし読みをし、また数年経ったらじっくり読みなおそうと思って楽しみにしているくらい好きだ。そろそろ読まねば。

 

 

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂

 

ということで、あの作品を書いた車谷さんは、どんな人生相談の回答を出すのだろうという興味本位で読んだが、そういう軽い気持ちはすぐにバッサリと袈裟懸けでやられる。
私がこの本で学んだことは、土手の散歩はいいらしいということ。
基本的に相談に答えていない。いや、いるのかな。いるのかもしれないけれど、なんかもう殺されているの、相談が。
という気持ちで文庫本解説までたどり着いたら、大好きな万城目学が同じような感想を持たれており、非常にほっとしている。
この本の一番の救いの箇所である。

この本を読んだら、とにかく外に出たくなる。
外の空気を吸いたくなる。そして散歩に出たくなる。
内なる精神からの脱出をはかりたくなっているのだな、きっと。
こんな人生相談初めてだ。
一読の価値、大いにあり。