四月の風

君に会えた四月の風

性懲りもなく

ひと知れず されど誇らかに書け - アイツと、読書と、音楽と

 

これ、この通り。

書かずにはいられない性分でございます。

まだ読者登録をして下さっている方がたくさんいらっしゃることに、感謝しております。

もしお好みに合うようでしたら、引き続きご愛読いただければ幸いです。

ご愛読ありがとうございました。最後に、あの懐かしの妄想物語を…。

さて、いよいよ平成最後の月となりました。

平成と令和をまたぐ形で岡村ちゃんのツアーがおこなわれるとは、2006年の段階では夢にも思いませんでした。

平成の最初から最後まで、岡村ちゃんのファンでいられたことは、勝手に苦しいこともたっくさんありながら、結果本当に幸せだったと思います。

平成の終わりとともに、私のこのブログも終了です。エレカシファンになって、自分の語彙が全くエレカシの音楽に追いつかないことにもがき苦しみ、鬱々としておりましたが、まだまだエレカシに関しては浅瀬でパシャパシャと小魚をとっている程度の、ちびっこファンですので、これからも内にこもりながら聴いていきます(笑)

そして岡村ちゃんの新しいファンがこれだけ増えた今、おばちゃんは静かに退場することにいたしました。

 

そこで、以前のブログ「アイツと、読書と、音楽と」で書いていたお話を最後に載せて終わりにしたいと思います。かなり賛否両論あったものですが、自分では気に入っておりますので(笑)。人が見たらきっもち悪いことこの上ないですし、完全に頭の中はお花畑ですし…。しかし、新曲が出たとき、アルバムが出たとき、その時期その時期の岡村ちゃんに関するネタを詰め込めるだけ詰め込んだこの妄想話、叩かれながらも4作も書いているところに自分の意地と、岡村ちゃんに対する気持ち悪めの愛情を感じ、ちょっと取ってこうかな、と。

 

ではでは、おそらくこれを読んでくれるのは「アイツと、読書と、音楽と」を読んでくれていたマニアックな方々だと思います。長い長いおつきあい、ありがとうございました。この物語の続きが、私たちにとっても岡村ちゃんにとっても、末永く幸せな状態で継続していきますように。

 

 

『ビバナミダ』

彼とつき合い始めてから3度目のクリスマスがくる。
もちろん、妻帯者の彼と一緒にクリスマスを過ごしたことは、まだない。そして今年も、ない、だろう。
彼と知り合ったのは、私がこの会社に派遣されてからすぐ。隣の部署だった彼に、必要以上に仕事を頼まれるようになってから、深い関係になるまではさほど時間はかからなかった。いつものことだ。私が働く上でいつも心がけたことはただ一つ。会社も男も、後腐れのないように別れること。

退屈な事務処理を適当に済ませ、これほど大きな会社なのに、電話ボックスほどのスペースしかない喫煙室で私はいつものように休憩をとる。煙草が好きなわけではない。狭い空間に身をおきたいだけ。
それと、この場所からは、あそこが良く見える。

もう何度かよっただろう、向かいの和菓子屋さん。部長が甘いものに目がないから、三時のおやつにはよくあそこに和菓子を買いに行かされた。そのおつかいも、もうすぐ終わりだ。
そんなことを思っていると、またいつものようにアイツがお店のおやじさんに怒鳴られる声が聞こえる。
「ヤス、何度言ったらわかるんだ。試食に丸々ひとつ売り物の大福をくれてやるやつがあるか!ちゃんと試食用の形の崩れた菓子があるだろうが!今の大福代も、おまえの給料から引くからな!」
「はい。わかりました」
何回同じことで叱られるんだろう、大きな身体を小さくして謝る姿がかわいらしくて、つい笑ってしまう。

あの日もそうだった。社内で彼の奥さんから電話がかかってきたとき、奥さんのご機嫌をとっている彼の姿を見ていたらなんだか何もかもどうでもいいような気がしてきて、和菓子を買いにいくふりをして、お店の横の路地で私はこっそり泣いていた。
「お母さん、いやだよ僕、あんこ嫌いだよー」
「ひろし、そんなこと言ってお母さんを困らせないで。お婆ちゃんはここの大福が大好きなんだから」
「僕はケーキが食べたいの。いちごがのったケーキ!」
そんな親子の会話が聞こえてきた。店の中をこっそりのぞいてみると、アイツがにこにこしながら男の子の頭を撫でている。
「ひろしくん、あんこが嫌いってほんとにぃ~?」
「大嫌いだよ!」
「そっか。このお餅の中には、ケーキが入っているのになー」
「えー、嘘だよ!そんなの見たことないもん」
「じゃあ、目をつぶって、大きな口あけて食べてごらん」
しぶしぶ大福を口に含んだ男の子は驚きの声をあげた。
「わー、ケーキの味がする!」
アイツが男の子に食べさせたのは、生クリームがたっぷり入った、この店自慢のいちご大福だった。
「だろー!お兄さんはね、あまーいチョコよりも、こっちが好きなんだ」
「僕もこれなら食べられる!」
そう言って、たくさんお土産にいちご大福を買っていったんだっけ、あの親子。
そして、隠れて見ていたつもりの、まだ涙の跡が乾かない私にも、そっと一ついちご大福をくれた。
「だいじょうぶ?」
と一言だけ声をかけて。

たまには自分のためにお菓子を買っていこうか、ここにもあとそんなに長くいれそうもないし、そう思いついて会社帰りに和菓子屋によると、そこには小指をたてながら、勢いよくティーカップの紅茶を飲むアイツがいた。
「あ、休憩中ですか?」そういうつもりが「なんですか?その紅茶の飲み方は?」ついつい聞いてしまった。
「え?僕の紅茶の飲み方、変わってますか?僕なんかいつもこんな感じですよ」
おかしい人。もう、ほんとおかしい人。
そう思っていたら、気が緩んできて、あっという間に私はお店の中で泣き始めていた。しかも号泣だ。
アイツは何も言わなかった。私が落ち着くまで店の隅っこにある可愛らしい座布団に座らせておいてくれた。
「つらいですか?」
そう声をかけられたのは、お店が閉店して、シャッターを閉めた瞬間だった。聞き違いかと思った。
「つらいですか?」
「つらいです」
「やっぱりつらいんですか。」
「はい。つらいんです。このお店に寄れるのも、あと少しだと思います」
なんで正直に答えちゃってるんだろう私。恥ずかしくなって、この間の大福のお礼すら言えず、お店を飛び出した。
それからしばらくは、向かいの和菓子屋には行かなかった。おつかいを頼まれても、お菓子は少し遠いお店に行って買うようにした。たまにはバターの効いた洋菓子もいいですよ、おいしいお店みつけたんです、とかなんとか理由をつけて。
そして私は年内中に退職することを彼に告げた。彼のほっとした顔を私は見逃さなかった。

会社を辞める前に、アイツの顔がみたい、そう思い、退職直前に勇気をふりしぼり和菓子屋に行った。
そこにアイツの姿はなく、口うるさいお店のおやじさんだけがぽつんと座っていた。
「今日は部長さんに何をたのまれたんだい?」
「ごめんなさい。今日はあのバイトの人に会いにきたの。ほらおじさんがヤスって呼んでいた」
「あー、あいつなら辞めたよ。もう半月になるかな。なんだか音楽活動に専念するとかって、かっこつけたこと言いやがってさ」
「え?あの人、ミュージシャンなの?」
そういえば、ギターケースを抱え、大きなリュックサックを背負ったアイツによくにた男性を、夜遅くに近所で見たことがあった。あれはアイツだったんだ。
私がぼーっとしていると、おやじさんが折り皺のたくさんついたチラシを見せてくれた。
「あいつさ、宣伝するなら、もっときれいな紙でよこせっていうんだよね。店の隅っこにでも貼ってやるっていうの」
そこには、ライブのお知らせが書かれていた。
日付は今日。12月23日。
「おじさん、この紙もらうね!」
返事も聞かずに私は走った。走って走って、心臓が口から飛び出そうなくらい走って、ライブハウスの中まで駆けていった。受付でお金を払うのももどかしく、いざ会場の入り口に立った時、私、何やってんだろう、と一気に顔が赤くなった。もう帰ろう、そう思った瞬間、受付の人が会場の扉を開けた。突然開け放たれたドアに、お客の何人かが文句を言ったが、そんなことに構っていられなかった。私はステージ中央に立つアイツの姿に目をうばわれた。

アイツはスーツを着ていた。いつもは変な子供の絵本からとってきたような柄のTシャツばかり着ているのに、そこにいたアイツは、黒のスーツを着こなした、メガネの似合う私の知らないアイツだった。
私、来るんじゃなかった、そう思った瞬間、アイツと目が合った。
そして彼は言った。
「新曲やります」
その一言で、観客は大騒ぎになった。
岡村ちゃんが喋った!」
「新曲なんて、6年ぶりだぜ!」
「今日来て、ほんとラッキーだね」
曲が始まると同時にライブハウスそのモノが突然生命を吹き込まれたように、うねり始めた。その力に私は圧倒された。私は、自分でも理由のみつからない涙を流し始めた。
その時、彼が私の目の前に歩み寄ってきた。周囲がざわつく。そして彼は歌った
「ビバナミダ こぼれおちてゆけばいいじゃん 無駄じゃない とまらない今の君が好き ナミダナミダ」
アイツは私の涙を手でぬぐいながら、こう歌った。
「その涙、僕に委ねてくれないか。七転び八起き。ともに行く また最高ってきかせて。ナミダナミダ。サイチェン」
サイチェンって聞こえたけど、それって中国語の再見?そして七転び八起きって、いったい?

そこから先の記憶が私にはほとんどない。気絶して、係の人に楽屋に運ばれて、気づいた時にはいつもの姿のアイツがいた。
「あなた、スーパースターだったのね」
私がそう言うと、アイツはフフッと笑い
「全然そんなことないですよ」
と謙遜してみせた。
「ううん。少なくても私には、今日のあなたはスーパースターだった」
ひとつぶだけこぼれ落ちた涙を、彼はくしゃくしゃのハンカチを大きなリュックから出してふいてくれた。
「その涙 僕に委ねてくれないか?」
そう歌う彼に、私はちょっと恥ずかしくなり
「七転び八起き、ね」
恥ずかしさをごまかすため笑った私に、彼はまじめな顔で
「あの、よかったら、24日僕と‥」
そう小さな声で呟いた。
時計を見ると、日付はもう24日に変わっていた。私の中の時計も大きく時間が動いたみたいだ。
「ひとつだけお願いしてもいいですか?」
「ん?なに?」
「あのライブの時のスーツを着てデートしてもらいたいの」
彼はまたフフっと笑って
「いいですよ。場所は合羽橋とか浅草でもいいですか?」
クリスマスイブに合羽橋かー。それもいいかも。とってもいいかも!
「それとあとひとつ。あなたの名前、まだ聞いていないんですけど」
「シンガーソングライターダンサーの岡村靖幸です」

 


『ちぎれた夜』

外国人観光客であふれる合羽橋でデートをしたのは、もう一年前になる。
会社のおつかいを頼まれ、よく通っていた和菓子屋にバイトをしていたアイツに
出会ったのは、もう一年以上前になるのか。
当時私は苦しい恋愛をしていた。今となってはそれが恋だったのか愛だったのかすらわからないような苦しいもの。そんな日常にふと入り込んできたのが、当時会社のそばの和菓子屋でバイトをしていたアイツだった。

名前は岡村靖幸。本人曰く、シンガーソングライターでダンサーでもあるそうだ。
アイツを知った時、私はテレビも見ない、ラジオも聞かない。音楽といえば昔の彼氏が家に置いて行ったアナログのレコード盤に針を落とすくらい。
だから初めてライブハウスでアイツが歌っている姿を見た時には驚いた。こんな音楽もあるのかと鳥肌がたった。
その翌日、約束どおりステージ衣装のスーツを着込んだ彼は、姿は違っても、またいつもの見慣れた「バイトのヤス」に戻っていた。食品サンプルのレタスを嬉々として作り、珍しい台所用品を見つけては、店の人をつかまえて質問攻めにする。
それがまたスーツ姿だけに目立つのだが、どうやら本人はまったくそういうことは気にしないようだ。
驚いたことに、何人もの人が「あ、岡村ちゃんだ!」とアイツを指差していく。
「あなたやっぱりスーパースターなんじゃない?」
と私が面白がって言うと
「柔軟剤買っている時まで指を差されるからびっくりしますね。」
と少し困った顔をする。そんな困った顔をいつまでも見ていたい、と思ってしまう自分に、私は正直戸惑っていた。

年末に会社を辞めた私は、年明けから浅草の小さな花屋でバイトをするようになった。元々私は花が好きだった。殺風景な自分の部屋にも必ず花だけは飾っていた。私のおじいちゃんは花を育てるのがとてもうまくて、いつも田舎の庭には四季折々の花が咲いていた。近所でも評判の花が溢れた庭で、私はそれがとても自慢だった。私が遊びに行くたびにおじいちゃんは花の名前を一つ一つ丁寧に教えてくれた。その花の名前と一緒に、必ずおばあちゃんとのその花にまつわる思い出もこっそりと教えてくれた。それぞれはほんの些細な出来事だけれどそこに花が交わることで、その思い出も私には色づいて感じられた。私の名前も忘れてしまったおじいちゃんは、最後まで花の名前とおばあちゃんの名前だけは忘れなかった。だから私はそのさまざまな思い出を引き継いで花と一緒に飾っている。

3度目のデートで、夢中になってパスタを食べながら、その様子をスマホのカメラで写している彼に、芸能人って不思議な生き物だなーと思いながら、
「私、花屋で働くことにしたの。」
と何気なく彼に報告をすると、
「へぇー。いいですね、お花屋さんか。へぇー」
へぇーを何度も繰り返す彼は、この世に花屋が存在することを初めて知ったかのような顔で感心して見せた。
「なぜ花屋なの?」
そう問う彼に、私は
「秘密。私とおじいちゃんとの秘密なの。」
そんな風に笑ってこたえた。

その次の日からである、彼の花屋通いが始まったのは。
私はまだ見習いなのでお店に立つことは少なく、奥で作業をしていることが多い。
「ごめんください。お花をいただけますか。」
人が3人も入ればいっぱいの小さな花屋に、彼はひょっこりあらわれる。
決まった時間などない。でも毎日必ずやってくる。
最初は店長が応対していたのだが、途中から私の知り合いだということに気がつき、奥の作業を交代してくれる。
「今日は何のお花にしますか?」
そう聞くと、彼は決まってこう答える。
「あなたが選んでくれますか?」
そこから私はなるべくその季節ならではの花を選ぶ。いくつかの種類を組み合わせることもあれば、たった一輪の花だけにすることもある。
「この花の名前はなんですか?」
お金を支払う時に花の名を質問する彼は、私がその名を口にすると数回繰り返し呟いては
「素敵な名前ですね」
とか
「全然想像もつかない名前ですね」
といった感想を言って、にっこり笑って帰っていく。その笑顔が私はたまらなく好きだった。

普段テレビを見ない私が、その番組を見たのは本当に偶然だった。
ニュースを見るつもりでつけたら、アイツが私でも知っているアイドルグループと歌っていた。そこにいる彼「岡村靖幸」はもう、私の知っている彼ではなかった。
「カリスマ的存在のミュージシャン」と紹介され、全く緊張の色も見せず、彼は絶対他の人には歌えないような独特の歌い方と、そして見たことのないようなダンスで、その日本のトップグループとも言えるアイドルたちを驚かせていた。
その姿はあまりにも遠く、テレビ画面というフィルターを通して見る彼を私は自分とは違う世界の人だと結論づけてしまった。

それから私は、花屋に行っても店頭に出ることはなかった。
彼がお店に来て、店長に応対を促されても、ちょっと今手が離せないので、と言っては避けるようになった。それでも彼は毎日花屋に通ってきた。でも前と違うのは、自分で花を選ぶようになったことだ。花の名前を聞くこともなくなった。

私は休みをとって田舎に帰った。おじいちゃんがいなくなってからは、すっかり庭も様変わりをしてしまった。それでも写真好きの父が暇を見つけては庭の写真を撮っていてくれたおかげで、おばあちゃんとアルバムを見ながら咲いていた花たちのこと、そしてその世話をするおじいちゃんのことを思いだしては泣き笑いしていた。しかしその花の思い出に、いつしかアイツが買っていった花の思い出が加わっていることにも私は気づき始めていた。

「おーい、お客さんだぞー。」
父の声のする方を見ると、庭のむこうにアイツが立っていた。
「素敵なお庭ですね。」
「いや、父が生きていたころは、もっと華やかだったんですけどねー。」
頭をかく父を押しのけ、私はアイツに歩み寄る。
「どうしたの?」
アイツは一冊のアルバムを持ってきた。
「花の名前を知りたくて。」
そこには、今まで花屋で買った花の写真がすべて貼ってあった。日付と花の名前入りで。しかし、あの日を境に、その花の名前の部分には付箋が貼ってあり、花の名は書いてあるものの、その隣にクエスチョンマークも書かれている。
「僕に花の名前を教えてください。そしてよかったら、その花の想い出も一緒に。」
彼は気づいていた。花への私の思いにいろんな要素が混じっていたことを。
実家の私の部屋で、私は彼が持ってきたアルバム一つ一つの花の名前を付箋をはが
しながら書き込んでいった。そして祖父が語った祖母との想い出も一緒に語った。
彼は黙って聞いていた。少し困った顔をしたり、驚いたりしながら、うんうん頷い
て聞いていた。全て名前を書きこんだときには、すっかり日が暮れていた。
これからレコーディングがあるので、そういってアルバムを大きなリュックにおし込み、彼は帰っていった。
「またあの花屋に戻ってきてくれますよね。」
心配そうな顔と、そんな言葉を残して。

翌日から私はまた花屋のバイトに戻った。
そして彼もまた、毎日花を買っていった。花の名前を聞くことも忘れなかった。
それからも、たびたびテレビで歌う彼の姿を見るようになった。カリスマと呼ばれ歌い踊る姿は、やっぱり今の私には遠い存在かもしれない。でもあのアルバムを抱えて会いに来てくれた彼もまた、実在するアイツなのだ。
花を買いに来てくれる、ただそれだけでいいのかもしれない。アルバムに花の写真が増えていく、そのことを大切に今は毎日を過ごしていこう。


『幸福』

アイツとのつきあいも、もう3年になる。
変わったことと言えば、私の部屋に歯ブラシが一つ増えたことと、同じ柄のTシャツがたくさん増えたこと、そして大量のレコードが持ち込まれたことくらい。これでも後輩にだいぶプレゼントしたんですよ、といいながら、驚くような枚数のレコードを抱えてきた彼は、ちょっと照れたような、誇らしいような顔をして笑っていた。
「こんなにたくさんのレコードがあるんじゃ、1階に引っ越した方がいいかもね。底が抜けちゃうわ。」
と笑う私の冗談を真剣に受け止めた彼は、あっという間に不動産屋さんに連絡をして近くのマンションの1階を借りてきた。

「花を植えたら素敵じゃないかしら?」
そう言いながら、ちょっと自慢げにカーテンを開けて見せてくれたそこには、小さなかわいらしい庭があった。
毎日家には寝に帰るだけの生活を続けて10年以上経つ。
「庭のある暮らしというものも選択できたのね。全然私そんな選択肢があることさえ忘れていたわ」
そう言うと、
「僕だってそんな選択肢があるなんて思ってみたこともありませんでしたよ。あなたのおかげです」
とアイツはにっこりと微笑んだ。
「なんの花を植えるか決めなくちゃね」
生活の中の変わらないことを挙げた方が断然多い。私はまだ花屋で働いているし、彼は音楽の仕事を続けている。
そんな変わらない関係性が私には心地よかった。
そう、私は幸せだった。

花屋からの帰り道、立ち寄った本屋にその本はあった。
最初はピンクのかわいらしい装丁に目がいった。
岡村靖幸 結婚への道」
本を手に取ろうかどうしようか迷っていると、次々と
「あった!サイン本ここにあった!やったー。3軒目にして買えたよー」
と女の子たちが嬉しそうにアイツの名前の横にハートのマークが描かれた本を買っていく。
私はサイン本ではないものを選び、レジに持っていった。そして夕飯も食べずに近くのコーヒーショップで閉店近くまでかかってその本を読んだ。
その中で、彼はまだ「出逢っていない」運命の人のことを語っていた。
読んでいくにつれ、私の胸は少しずつ痛みが増していった。
その時初めて、自分がアイツの運命の人なのかもしれない、なんてほんの少しでも思っていたことに驚き、恥ずかしさでいっぱいになった。
「スーパースターだもんね、あなたは」
本を閉じ、そのままコーヒーショップのテーブルの上に置いて、私は外へ出た。
いつの間にか、風が冷たく感じる季節になっていたんだね。そんなことにも私気づいていなかったんだ。
こんな日に限って月の光はまぶしくて、私の涙を隠してはくれない。

「ちょっといそがしくなります。」
彼はそんな簡単なメールを寄越して、家に来なくなった。
私の生活は、またいつもと変わらない単調なものとなった。花屋で花を売る。ただそれだけ。外の景色を楽しむ時間すら忘れてしまっていた。

久しぶりのお休みの日、お天気もいいし、部屋の掃除でもはりきってやるか。アイツのものなんか捨てちゃおうかな。
ちょっとそんないじわるなことも考えつつ、勢いよくカーテンを開けるとそこには植えたはずもない花がたくさん咲いていた。
カランコエだった。ピンクや黄色い小さな花が一斉に咲いていた。
よくみると、花の横に小さな木の箱が置いてある。中には一通の手紙が入っていた。
「この花が咲くころ、あなたに贈りたいものがあります。11月15日の朝刊を見てください」
そう書いてあった。
やだ、今日じゃない!
慌てて新聞受けから新聞を取り出し、小さな記事を次から次へと見ていった。私やアイツに関係しているような記事は一つもない。
いったい何が載っているのよ。そう思って新聞をめくった瞬間、私は息が止まった。
そこに飛び込んできたのは、カラーの全面広告。岡村靖幸ニューアルバムの発売予告だった。
仕事中は絶対にしないと決めていた電話。でも、今日だけは許して、と思いながらアイツに電話をかけた。
「もしもし」
その声を聴いたとたん、私は何もしゃべれなくなった。
「あ、新聞見てくれたんですね。ってことは、あの箱にも気づいてくれましたか?」
うんうん、としか言わない私にアイツは
「あなたの本もちょっとお借りしました。箱の中に一緒に入っていますから。
 実物が出来たら持っていきます。まだレコーディングの最中なので。」
と言って電話を切った。
本?もう一度箱の中を見てみると、そこには私がボロボロになるまで読んだ「花言葉辞典」が入っていた。
花を買いにくる人は、贈り物としての花を買っていく。その時に、花言葉を一言添えてあげるとお客さまにとても喜ばれるのよ、そういって私が彼に見せた本だ。

カランコエのページには、付箋が貼ってあった。
花言葉は「たくさんの小さな想い出」「ときめき」「幸福を告げる」そして「あなたを守る」。
幸福の文字には大きな丸がついていた。
あ、アルバムのタイトル…。
慌ててもう一度新聞を見た。大きな文字で「幸福」と書いてあった。


「『幸福』の先にあるもの」

カレンダーにしるしをつけたことなんか、子供の時以来だ。
昨年の新聞広告を見て、慌てて来年のカレンダーを買い、壁に貼る。
1月27日に丸印をつけ、幸福と小さく書き添える。

アイツに久しぶりに会ったのは、松の内も過ぎた頃。ひょっこり夜中に部屋を訪ねてきた。
「これから初詣に行きませんか?」
どうやら近所の小さな神社に一緒に初詣に行けたらいいね、と去年散歩しながら話をしたのを憶えてくれていたようだ。
「今から初詣なんて、神様に笑われないかしら」
そういうと
「案外神様は寛大なんですよ、そういうところ」
とアイツは真面目な顔をして答えた。
急いで支度をして、歩いて5分の神社にむかった。
私が熱心に手を合わせていると、不思議そうに
「何をそんなにお祈りしているの?」とアイツが聞いてくる。
「言ったら叶わなくなっちゃうから、秘密よ。」
私がそう言うと、彼は自分でも真剣な顔をして手を合わせた。
何を祈っているの?そう聞くことができたらどんなに楽だろう、横顔を見ながらそう思っているとそれをまるで知っているかのように、アイツは微笑ながら
「秘密よ!」と少しおどけてみせた。

その日、カレンダーに印のついたその日は、朝から何も手につかなかった。仕事も休みだというのに、朝の5時から目が覚めてしまい、そこからいったい自分が何をしていたのかもあまり憶えてはいない。
とにかく朝の早い時間に玄関のチャイムが鳴った瞬間、私が勢いよくドアを開けて、アイツにぶつかりそうになったことだけは憶えている。
「約束どおり、一番に持ってきましたよ。」
彼が差し出した茶色い封筒、そして封筒の下に「Y.O」と書かれた文字を見て、私は全てを思い出した。
「まさか、あなたがあの時のお兄ちゃん?」

それはまだ私が幼稚園に通う前の話。
実家の敷地には小さなアパートが建っていた。祖父と祖母が建てたほんとうに小さな、アパートと言うより下宿屋といった感じの建物だった。
私はよく庭で花の手入れをする祖父母にくっついて、隣で泥遊びをしていると、アパートの一室からギターの音が聴こえてきた。
テレビやレコードから聴こえてくる音とは違い、生で聴くギターの音はとても魅力的だった。
特に夏場などは、部屋にクーラーなどない時代だったので、その部屋の住人はドアを少し開けてギターを弾いていた。私はこっそり覗いては隠れ、覗いては隠れ、を繰りかえしていた。

もちろん、そんな子供のすることを、その住人が気づかないわけもなく、私がドアのそばにいる時には童謡などをギターを弾きながら歌ってくれていた。しかし歌詞がいつもあやふやらしく
「なんとーかなんとーかーなんとーかーだー」
とあからさまに誤魔化して歌うので、ある日、意を決した私は
「違うよ!そのお歌は、こう歌うんだよ!」
と扉を開けて歌ってみせた。
「お、仔猫ちゃん、歌がうまいねー。才能あるじゃん!」
そう、その頃の私はまるで仔猫のように転がりまわって遊んでいたので、祖父母が「うちのかわいい仔猫はどこに行ったー?」などとふざけて私を呼んでいたのを、お兄ちゃんは聞いていたのだ。
扉のむこうにいたお兄ちゃんは、そのギターの音と同じくらいかっこよかった。
私はとても恥ずかしくなって、祖父のところまで駆けていき、その大きな背中に隠れた。
そんなことを何度も繰り返していた。はっきりと顔を見るのも恥ずかしいのに、どうしてもそのギターの音が聞きたくて、お兄ちゃんのそばにいたくて。今思えばあれが私の初恋だった。

そのお兄ちゃんは一年ほどアパートに住んでいた。
ある日、私が庭で遊んでいると、紫のコートを羽織り、ギターケースを抱えたお兄ちゃんが私のそばにきた。
「仔猫ちゃん、今日でお別れだよ」
「なんで?嫌だよー」
わけもわからず泣く私に、お兄ちゃんはひとつの茶封筒をくれた。
「これはね、僕のギターの音が入っているカセットテープだよ。僕は東京で有名になるからね、その時まで大事に持っていてくれるって約束してくれる?」
「嫌だ!私はゆれるお年頃なんだから。だめー。いなくなっちゃだめー。」
と、テレビドラマで憶えたお気に入りの言葉を使って、精一杯泣きながらお兄ちゃんをひきとめた。
「揺れるお年頃かぁー。かわいいなぁ。じゃあ約束だ。僕が有名になったら、『揺れるお年頃』ってお歌を作るから、僕を見つけるんだよ」
そういって彼は、私の祖父母や両親に挨拶をしてアパートから出ていった。

泣き止まない私に、両親はお兄ちゃんが残してくれた紫色のカセットテープを聞かせてくれた。
それはいつも聞いていたあのギターの音がした。そして歌詞があやふやなままの「赤とんぼ」も入っていた。
私は毎日毎日そのテープを聞いては、茶封筒にしまい、を繰り返していた。


「ちょっと待って!」
私は押入れの奥から箱を出し、ふたを開けた。そこには「Y.O」と書かれたボロボロになった茶封筒が入っている。
「あ、懐かしいなぁ。持っていてくれたんですね。」
「あなたはいつから気が付いていたの?」
「あなたの実家に行った時からですよ、ほら花のアルバムを持って」
そうか、あの時。父や母がすんなり彼を家に招き入れたことにも気づかないくらい、私、驚いていたんだった。
「今日は約束を守るために来たんです。開けてみて!」
アイツが持ってきた茶封筒を開けると、そこには小さいけれど持ち重りのするBOXが入っていた。
私は立ったまま、急いてBOXのフィルムを剥がした。そしてその中に入っているCDを見る。
4曲目「揺れるお年頃」。
「キミに一番に見せたくて、今日までファンのみなさんにも曲目は秘密だったんですよ。」
うちにレコードしかないことを知っている彼は、携帯プレイヤーを持ってきて、
「聞いてみてください。」
と言った。それから私は一曲目から順番にアルバム「幸福」の曲を聴いた。
「あ、猫のあくびって?」
「よく仔猫ちゃんは、僕の部屋の前で大きなあくびをしていたでしょ。」
ギターの音があまりに心地よく、私は扉に寄りかかっては、何度も何度もあくびをして居眠りしそうになっていたんだっけ。そんなことまで憶えていてくれたんだ。
CDを聞き終え、写真集を見て、そしてDVDも見終わろうとした、その時
「ゆうやーけこやけーの赤とーんーぼー」
画面の中のアイツがギターを弾きながら歌っている。
「あなた、まだ歌詞があやふやなんじゃない」
笑ったつもりが、大泣きしていた。まるであの時お兄ちゃんがアパートを去った時のように、私はあの頃の自分に戻って大泣きした。

「さあ、神社にもう一度行きますよ」
アイツがそう言った。
「願いが叶ったら、神様にお礼を言いに行くんですよね?」
「うん。私もお礼を言わなくちゃ。」
そう。私は一度に二つのお願いが叶ってしまったんだから。
無事にアルバムが出ますように。
そしてもう一つ、あのギターのお兄ちゃんにまた会えますように。
「あ、あなたのお願いは何だったの?」
「秘密です!でも願い事はこれで最後にするんです。一番大事な願いは、自分で叶えるよう努力します。」
そう笑顔でこたえるアイツの顔を見て、私は心から思った。
「寛大な神様、もう一つだけお願いしてもいいですか?
 この人の「幸福」がずっとずっと続きますように。そしてその「幸福」をずっとずっと側で見ていられますように」と。

 

 

 

過剰、すなわちそれが正常。岡村靖幸の新譜がまたしても凄い。

いわば岡村さ。

今も靖幸さ。

 

散々エレカシに、宮本さんにうつつを抜かしているワタクシだが、やはり岡村靖幸の新曲には最大限の期待を持ち続けている。

昨日発売となったこちら。

 

少年サタデー

少年サタデー

 

二つのタイアップが付いていること自体、大変喜ばしい。タイトル曲は現在「王様のブランチ」テーマソングとなっているので、耳にしたことのある方も多いだろう。

「少年サタデー」、キラッキラッしている。キラキラし過ぎ?いや、少年とはキラッキラッしているものですよ。というか、キラキラしていて欲しいし、絶対。キラキラしていることを自覚してほしい。

「王様のブランチ」という番組、流れる時間、様々考えて、もうこれしかないでしょう、というくらいマッチしていると思う。年々優しさも加わり、包容力すら感じる。岡村の包容力。自分で書いてびっくりしたわ。びっくりしたけど、そう思うのよ、最近。だから、ちょっと泣けてくる。完全に嬉し涙。

私の心のポーチに大事にしまっておいたものが、ブワーッと一気に解放されてしまう、そんな感じ。

 

いわば岡村さ。

いつも靖幸さ。

高校の時から聴いてるキミを信じたい。

 

現時点で私は歌詞をまだ見ていない。というか、基本的に歌詞はしばらく見ない。

「今なんつった?」

こそが岡村楽曲の醍醐味であり、ずっと信じ続けていた歌詞が完全なる空耳であったことを知る瞬間の恍惚感は何物にも変えがたい。その感覚に抗えずここまでやってきた私は、2曲目の「セクシースナイパー」でガッツポーズ。空耳度高し。「性にまつわる問題」と聴こえた気がするが、これが間違っていたら私、どうかしてる。とにかく聴き込むとしよう。

しかし、この曲で何度も問いかけられる「最近はどう?」から始まるこのフレーズ。これ、良くないですか?完全に「私」に問いかけてきているでしょう、これ。妄想力をかきたてる岡村の問いかけ。この時点で、私、ちょっと胸が苦しい。生で歌われたら、イチコロだろう。

サウンド的にもズンっと下半身に響く、そしてほんのりと不穏な音が聴こえてくる、うわっ、岡村ーっ!(//∇//)と歓喜の声をあげたくなる。ホルモンに影響を及ぼす系。

 

2曲聴いた時点で、必死で応援し続けてきたつもりが、応援されているのは自分の方だったなぁ、なんてことを改めて強く思ったり。

 

ここから「スーパーガール(エチケット2019ver.)」、「スーパーガール(BTF ver.)」と、スーパーガールが2曲続く。

なんといっても、今回のこのエチケット2019バージョン、私はこれに驚いた。

岡村靖幸の真似というのは、ある部分部分を突出して表現されることが多い。また、自分の中でも、頭の中で岡村楽曲を奏でる時に、若干過剰に脳内再生していることがある。過剰だな、と物真似も自分のことも思っている。

しかし、今回のこのバージョンの岡村度の高さ、過剰度は過去最高じゃない?そんなことない? 自分の中でちょっとオーバーだったかな、と思っていた部分が全然オーバーじゃなかった驚きと喜び。

一貫して「ダンス、チャンス、ロマンスは自分次第だぜ!」という気持ちを歌い続けてきた岡村。正しい表記は「デンス、チェンス、ロメンスは自分次第だぜ!」なんですが(嘘です。前述が正解)、この最重要部分に至っては、もう、もう‥。ダンスをデンスと言う私たちを嘲笑うかのごとき、猛烈なデンスのご発声。誰よりも過剰だったのは、岡村靖幸だったなんて、最高じゃない?しかも、めっちゃ楽しそうな歌声。何度目のバージョンアップになるんだろう。至福。最強。

 

全曲聴いて思ったのは、岡村史上、今が一番良い声してるってこと。よくぞここまで、と思っている。楽曲の素晴らしさは、それはもう今さら言うまでもない。いや、言うけどね。やっぱり岡村ちゃんの作る歌は私の胸を瞬時に高鳴らせる。

そこにプラスして、現在の声の、聴いていて全く不安がない感じ。今のところ、欲しがってばかりの私だが、これ以上望むものがないくらい。

春ツアー、新曲を生で聴くことを楽しみにしています。カッコいいに決まってる。

少年サタデー

少年サタデー

セクシースナイパ―

セクシースナイパ―




 

宮本、散歩中。

宮本、散歩中。|宮本浩次のソロ

これは気になる。

気になりすぎる。

宮本浩次、ソロプロジェクト、

一筋縄ではいかなそう\(^o^)/

 

宮本浩次が青春を見つけた。

青春が始まるようです。

f:id:sakurakanade:20190120214948j:image

 

詳細出ました!

トピックス|後妻業 | 関西テレビ放送 カンテレ

宮本浩次、ソロプロジェクト始動!小林武史プロデュースによるデビュー曲「冬の花」がドラマ主題歌に決定!

 

やはりこのお花には意味があったのですね。

f:id:sakurakanade:20190121063344j:image

エレファントカシマシ2019新春武道館公演(1/16)に行ってきました!

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

今頃か?一月も半ばを過ぎて今頃の挨拶か?とお思いでしょうが、これが終わるまでは私の年は明けておりませんでした。

新春日本武道館

昨年は息子の受験のため、泣く泣く諦めた新春公演に、やっと行くことができました。

そして、驚くべきことに、わたくし、このたび武道館最前列という一生に一度あるかないかの神番をいただきました。

 

スマチケでしたので、数日前にしか自分の席はわからないので、完全に2階席を想定しオペラグラスも準備して、先の大阪公演のセトリもほんのり薄目で見る程度の準備だった己に急遽喝をいれなくてはならぬ状態となり、しかしここ数日は空中に3cmほど浮いてますくらいの浮遊感を味わいながらの日々。ただひたすら、インフルエンザに罹りませんように(家族も含む)、階段踏み外したりしませんように(家族も含む)、と日々の生活をそろりそろりと送ってまいりました。

 

ということで、無事当日をむかえました。

お天気にも恵まれ、念には念を入れて半休を取りつつも、逆に落ち着かないので午後もある程度仕事をし、16時頃とりあえず武道館へ。

グッズもすでにみなさん、お買い上げになった後だったので、待ち時間なし。

お目当てのクリアファイルは案の定売り切れでしたので、マグネットを購入し、武道館の写真など撮りつつ、開場時間を待ちました。

f:id:sakurakanade:20190117105514j:image

んまぁ、その間の音漏れの凄まじさね。

こちらはセトリを軽く知っていたので、心の平静は保てましたが、全く知らない状態だったらきっとこの漏れてきた曲を聴いただけで、私は失神していたことでしょう。

だって、それが一曲目の「脱コミュニケーション」だったから。

 

新春一発目に「脱コミュニケーション」をもってくるその心の強さ、剛の者感。これぞエレカシ!という嬉しさ爆発。普通一曲目であの歌いっぷりじゃ、次からの曲に差しさわりが出てもおかしくない、というくらいの気合と高ぶり。やはり何事も最初が肝心。

 

「Wake Up」で本日の宮本さんの声の絶好調っぷりを確認し、新春って感じだねぇと「新しい季節へ君と」にうっとり。

今回の私の席は、ちょうど脇の花道の途切れるあたり。ここまで宮本さん来るかなぁ、今日はどうかなぁとドキドキしながらお待ち申し上げておりましたら、4曲目「星の砂」で乳首と股間を指し示しながら至近距離へ。

こういう時、どういう顔すればいいんですか、私…。お年玉をありがとう、と素直に喜んでおきます。(ちなみに下手では、股間にライトを当ててアピールしていました。なんだろう、安心感…)

花道を使って端までいらっしゃった回数は少な目ではありましたが、もう回数じゃないね、ライブハウスで去年拝見した時同様、「実在している!」感を味わうことができて幸せでした。

 

カメラマンの岡田さんのカメラ機材一式も私の目の前でした。宮本さんが凄い表情をしている時に、「岡田さん、これを、この表情を!」と思う瞬間には、もう絶対岡田さんが宮本さんをロックオン。素晴らしいタイミングですね、ありがとうございます!と思うと同時に、私の身体の中の貯金箱からチャリンチャリンとお金のこぼれ落ちる音が聴こえてきます。

岡田さん、あなたのお写真があまりにも素晴らしいので、私の貯金が、貯金が…。

 

今回は非常にMC少なめ。

ほとんどメンバー、サポートメンバー紹介くらいしかしゃべらなかったと思います。

(メンバー紹介、いつも通りのその紹介が、一番嬉しい)

その代わり、曲が終わった瞬間から次の曲のリズムを宮本さんが刻み始め、その繋げていく状態が心地よい流れとなっていました。一曲でも多くの曲を届けようという強い意思も感じました。

私にとって11回目のエレカシライブでしたが、一番MCが少なく、しかし一番雄弁であった気がします、MCが少ないということに最後まで気が付かないほどに。

選曲ももちろん意味のある曲が多かったと思います。

良い曲を残す人というのは、どうしてこうも予見するような曲を作るのでしょうね。

今歌うことに意味が絶対ある!という曲がこれほどあるのか、と鳥肌が立ちました。

自分の中ではなぜか今まであまりしっくりきていなかった「大地のシンフォニー」が今回秀逸でした。その曲の持つ懐の深さが今の彼らにぴったりだからでしょうか。エレカシの、宮本浩次のスケールが、ここへきてまた大きくなっていることに驚き、まだこの人たちはステージ上で再生を繰り返し続けるのか、という喜びに打ち震えました。

明らかに去年のエレカシより、またひとまわり大きくなっていました。そして今までにない「自由」な感じもうけました。

「too fine life」、一昨年の野音の時も感じましたが、この歌詞のラスト「悪いようにはならないさ」が、ぐんぐん前向きに伝わってくるのが嬉しい。

 

そんな曲が続く中で歌われた「珍奇男」は、私の中でのベスト珍奇でした。

エレカシの凄いところは「大地のシンフォニー」も「珍奇男」も、30周年を経た今、同じステージ内で同率で成り立つところだと思います。全然違和感ない。きっちりとその歌の持つヒリヒリ感が出せるって物凄い。

 

「リッスントゥザミュージック」での金原さんと宮本さんの向かい合ってのセッション部分。

赤い炎と青い炎の対決と言いましょうか、私の側からはその時の宮本さんの背中しか見えないのですがあの両者の出し合う凄みは圧巻。金原さん、一年中全国を飛び回るそのバイタリティー、憧れます。

 

「昔の侍」が聴けたのも嬉しかったなー。

「桜の花」はピンクのライティングも含め、武道館にとても似合っていました。ちゃんと俺が再び咲かせていたし、私はこの歌を生で聴くたび、その再び咲かせてくれた桜の花びらの一つに自分がなれたような、自分自身が再生させてもらっている気がするのです。

 

そして私の涙腺決壊ポイントは「風に吹かれて」でした。

サポートメンバーだけで演奏が始まるニューレコーディングバージョンの風に吹かれて。

あぁ、ソロとは、こういう姿なのかもしれないな、と感じさせられました。

素晴らしかった。本当に素晴らしい歌声でした。会場のみなさんのいつもの振りが全く出ないほどに。

 

マボロシ」の後のうっとり感から聴こえてきた鳥のさえずり、うっとりしっぱなしでいると大変な目に遭うぞ!というのが、これが悪魔のささやきの「朝」だから。ピヨピヨののちにきました「悪魔メフィスト」。

第一部のクライマックスなのですが、アルバム「悪魔のささやき」が大好きな私は狂喜乱舞でしたね。

これはもう、狂っていた。だって、最初の方、全くリズム無視で宮本が歌うんです。それがめちゃくちゃカッコいい。そしてもうライトの点滅が凄いの。ポケモンショックを喰らうかと思うほどに。狂気。最高。

 

第二部は「Easy Go」から。カッコいい…。

今回も石くんにグイグイとにじり寄る姿が見れて良かった。

こっちの足は張りかけているのに、宮本さんの絶好調は続きます。

「かけだす男」が聴けたのも嬉しかったなぁ。この時のライトが超カッコよくて!早速ナタリーがその写真を載せていますので、一番下に記事のリンクを貼っておきます。

「風」の高音が、これだけの曲数を歌った今、こんなにも出るなんて、どうなっているんだと思わず首をかしげました。今回の宮本さんの弾き語り、どれも素晴らしかった。

 

アンコールは今宵と「ゴクロウサン」。

ゴクロウサンの時の石くん、カッコ良かった!というか、石くん、髪型も普通に戻り(笑)宮本さんとの絡みも多く、めっちゃ良かったです。(まあ、私の席からは宮本さんと石くんしか見えなかったので、必然的にその二人に集中したのですが。きっとトミも成ちゃんもカッコ良かったはず…)

「脱コミュニケーション」で始まり、「ゴクロウサン」で終わる。これぞエレカシ

ストーンズ風挨拶の時の、みなさんの晴れやかな笑顔。特に宮本さんのすっきりとした笑顔、最高でした。

 

長々と書いてまいりましたが、今回一番思ったことは

宮本浩次、歌上手い!」

歌の上手さが際立つ素晴らしいセットリストだったと思います。

おそらくそれは、宮本浩次ソロプロジェクトがこれから進んでいくんだ、と知っているからなおのこと強く感じたことかもしれません。

それにしても、です。今回の歌声は秀逸でした。言葉は不要。強い志を感じる素晴らしい歌声でした。説得力の塊。エレカシでもソロでも、こっちは神輿を担ぐぜ!とにかく応援するぜ!そんな気持ちです。

 

今年のチケット運、早くも使い切ったかもしれません。

それでもかまわないと思うほどの多幸感を味わうことができました。

エレカシを好きになって本当に良かった。

私の年が明けました。ライブ初め、縁起のよい幕開けです。

 

本日のセットリスト

第一部

1 脱コミュニケーション

2 Wake Up

3 新しい季節へキミと

4 星の砂

5 悲しみの果て

6 ワインディングロード

7 リッスントゥザミュージック

8 昔の侍

9 大地のシンフォニー

10 絆

11 too fine life

12 珍奇男

13 今をかきならせ

14 風に吹かれて

15 桜の花、舞い上がる道を

16 笑顔の未来へ

17 ズレてる方がいい

18 俺たちの明日

19 マボロシ

20 朝

21 悪魔メフィスト

 

第二部

22 Easy Go

23 デーデ

24 かけだす男

25 旅立ちの朝

26 風

27 四月の風

28 so many people

29 ファイティングマン

 

アンコール

30 今宵の月のように

31 ゴクロウサン

 

(私のエレカシ生聴き、現在延べ247曲)

【ライブレポート】エレファントカシマシ、恒例の新春ライブで「いい顔してるぜエビバデ!」 - 音楽ナタリー

 

そして素晴らしいレポを見つけたので追記します。

エレファントカシマシ 新春が似合う男たちの熱く清々しい快演が幸福な温もりをもたらした一夜 | 【es】エンタメステーション

 

 

今年の私のベスト本発表

さて、年末恒例行事、私の今年のベスト本を挙げてみたいと思います。

今年は本日現在までで101冊の本を読みました。ここ数年ではかなり読むことができた方です。

10冊に絞ることができず、以下の通り12作品となりました。今年も本の神様に感謝する作品と出会うことができました。

 

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

 

ジャンル分けできない面白さ、抒情感。世に名作と言われるものは、必ずや理由があると深く納得できた作品

 

 

ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

 

もう見事見事。500ページを超える大作だったが、後半は一気読み。もし自分が…、と考えてもなかなか思いつくことはないが、想像力とはなんと美しいものよ。

 

 

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

 

非常に面白かった。ハラハラドキドキ。そして主人公が魅力的すぎる!こういう人と一緒に暮らしたら、どんなに前向きに生きていけることか!

 

 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

今年のベスト3に必ずや入ること間違いなし。伏線につぐ伏線。それが見事につながって、ラストはもう泣いた泣いた。

 

 

ラブという薬

ラブという薬

 

これはもう何度でも読みたいと思った。いとうせいこう星野概念のカウンセリングを受けてみようという感じ、すごく良く分かる。下手な薬よりよく効く文章だと思う

 

 

柔らかな犀の角 (文春文庫)

柔らかな犀の角 (文春文庫)

 

読書日記、かくあるべし、という見本のような本。こういう風に本を読みたいんだ、私は!

 

 

さざなみのよる

さざなみのよる

 

今年のベスト1が出た。これを超える本が出るとは思えないほど心に沁みた。木皿泉という人たちは、どんな苦しい時間を乗り越えてきたのだろう。

 

 

明日に向かって歩け!

明日に向かって歩け!

 

これが噂の!あまりにも面白い。フライドチキン10個の話や、ヤマハのピアノ教室やめさせられた話など、数々の宮本伝説がここに(笑)。再販を切に願う。

 

 

おるもすと

おるもすと

 

短い物語ながら、存在感、重量感がある。ブタのパンのように。又吉直樹の声で脳内再生というのがいちばんしっくりくる

 

 

ストーナー

ストーナー

 

静謐にして完璧。人生は悲しさでできているのか。そして悲しさとはかくも幸福で静かなものなのか。東江一紀氏渾身の訳。(緩和治療を行いながら、最後の1ページを前に力尽きる)これこそが人生。

 

 

芸人と俳人 (集英社文庫)

芸人と俳人 (集英社文庫)

 

私の中の俳句入門決定版。なんとわかりやすく、なんと又吉が素直で柔軟な頭の持ち主か。おかげで優しい説明が倍わかりやすくなっている。非常にありがたい一冊

 

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

私の本に対する向き合い方を根底から変える本と、平成最後の12月に出会うことができた。至福。又吉先生、ありがとう。

赤羽にてエレカシのルーツを感じてきました

北区のエビバデ!エレカシ楽曲がJR赤羽駅発車メロディに決定(コメントあり) - 音楽ナタリー

 

ということで、発車メロディを聴きたいがために、行ってまいりました、一年ぶりの北区赤羽。

備忘録として、本日撮ったお写真を置いておきます。(お店のお写真等は全て許可をいただき撮影しております。)

一年前は、紅白の垂れ幕見たさに行き、本当に垂れ幕しか見ないで帰ってきたわたくしですが、今日はかなり「うおっ!ここは!」と思える場所を周ることができました。

 

f:id:sakurakanade:20181118180619j:image

発車メロディ、いやー、両方とも非常に良かったです。この時点で早くもジーンときてます。想像の上をいく感動。赤羽の人達が、本当に羨ましい!実際の歌のキーと同じところがまたグッときます。

f:id:sakurakanade:20181118180832j:image

去年はこれが紅白の垂れ幕でした。

f:id:sakurakanade:20181118180906j:image

駅に早速ポスターが!

f:id:sakurakanade:20181118180939j:image

1番街商店街に横断幕ドーン。

f:id:sakurakanade:20181118181051j:image

すずらん通りに特大の垂れ幕がドーン。

これに気をとられていると、突然の

f:id:sakurakanade:20181118181154j:image

めちゃくちゃテンションが上がりました。

お店に上がるこの階段の脇にはポスターが!

f:id:sakurakanade:20181118181328j:image

そしてお店に入ると

f:id:sakurakanade:20181118181441j:image
f:id:sakurakanade:20181118181444j:image

店内がまた、エモい。めっちゃエモ。何から何まで「昔から変わらぬ感」が強く、だからこそどれを見ても、もしかしてこれは…、と思えるものばかり。この時点で今日の自分にドン引きなのですが、まあ一日くらいは許可する!と自己を肯定し、美味しくオムライスとコーヒーをいただきました。

 

お店を出て、ほんの数分でこちらを発見。

f:id:sakurakanade:20181118182106j:image

「すみません、私たち、エレカシさんのファンなのですが…」という言葉を生まれて初めて勇気を持って受付のお姉さんに発し、非常に快くこちらを撮影させていただきました。

f:id:sakurakanade:20181118182320j:image

上の練習スタジオからは、ドラムを練習する音が聞こえ、これまたちょっといろいろ想いを馳せてしまいましたね。

赤羽公園でthe Rootsで見たすべり台も確認。

 

さて、駅の反対側に歩き、団地へ向かう階段へ。駅からあまりにも近くてびっくり。

f:id:sakurakanade:20181118182622j:image

もちろん下りの坂も撮影。

f:id:sakurakanade:20181118182706j:image

本当はこの団地まわりだけで10枚くらい写真撮ってます。感無量。

 

f:id:sakurakanade:20181118182859j:image
f:id:sakurakanade:20181118182846j:image
f:id:sakurakanade:20181118182855j:image

素晴らしい推しっぷりの新星堂さんにも寄り、本日の赤羽の旅は終了。

 

狭い範囲で、これほどまでに縁の場所が!ということに驚き。ぜひまた来たいと思える充実した赤羽散策となりました。

一年前では、まだこの場所場所に対するありがたみはわからなかったなぁ、私。