四月の風

君に会えた四月の風

『エレファントカシマシ~1988/09/10 渋谷公会堂~』

 

 

坂西伊作という人は、なんだかもう本当に、先の先の先を見据えて録っていたんじゃないか、そう思わせる監督ですねー。しみじみ。

1988年、伝説の渋谷公会堂ライブ。発売から約3ヶ月、かなり寝かせて拝見しました。
本当は2009年野音を見続けていたのですが、一ヶ月以上経ってもまだ見終わることが
できない。どうも行きつ戻りつしながら観てしまう。
ちょっと気分を換えて、初期の初期など拝見しようじゃないか、と選んだのがこの作品。

一番驚いたのが、メンバーが宮本さんを凝視していないことですかね。
特に石くんの終始ノリノリのギターは衝撃。
いつからあそこまで凝視するようになったかは、今後の私の中の研究課題です。

そして、ブルーレイについていたライナーノーツに書かれていたこの言葉。
「ステージの大きさに関わりなく、4人の距離感を変えないようにしていた」
当時のマネージメントの綾部氏の言葉だそうです。
エレカシのステージを観るようになって、私はいつもその4人の距離感が他のバンドに
比べて中央にかなり寄っていることがずっと気になっていました。
なんと、もうこの頃からずーーーっとだったのですね。
これもエレカシというバンドを形作る特徴的、かつ重要な要素だと思います。

劇場場で大根監督が、このステージを観に行くために、花屋のバイトからいったん帰ってスーツに着替えて渋公に行った話をしていました。「宮本たるべし」と。
ちょっと、その行為、わかるわーーー。
冒頭、Gジャンに大きなユニオンジャックをつけた女の子たちが立ち上がりかけて、もうそんな雰囲気じゃない!と座る場面が後ろから映されています。
とにかくこのステージ、終始「そんな雰囲気じゃない!」だらけ。
宮本さん本人がそもそも怒っている。終始こんなのおかしい!と怒っている。
それでも歌うと凄いんだ。

86年ソニーオーディション合格者6組、という動画がYOUTUBEにあるので、消えないうちに観てみてください。
その6組の中にユニコーンエレカシがいるのです。
この時の審査員の気持ちを考えると「やったぜ、俺たちやったぜ!」だったのでは
ないかしら。86年、おかしい。明らかに玄人はだし。民生が細くてな…。
言いたいのはそこではなく、すでに宮本さんのボーカル力の凄まじさ。
で、先ほどの話に戻るのですが、歌う宮本、歌い終わりさーっと冷める宮本。
その感情の起伏がたまらない。ポカリを飲んでいる様子など、まだ17歳くらいに見えるだけに、この歌声はすごいインパクト。

客電がついたまま、ステージは大道具が雑然と置かれたまま(片付けられてもいない)。
もう生の裸より裸のエレカシをご覧ください!だったわけですよね。
当時、一番混乱したのはメンバーとその場にいたお客さん。その空気を29年後に見るとこれはもう貴重なお宝映像となるわけです。ありがたし。