四月の風

君に会えた四月の風

母性にも涙腺にも刺激をあたえる「ライフ」

 

ライフ

ライフ

 

 

さて、「ライフ」の感想をやっと書いてみようと思います。
とにもかくにも「小林武史」。
小林武史色に染まってみた平熱の叫ばないエレカシを聴く、というアルバムだと思います。
色に染まる、というのは語弊があるかもしれません。エレカシ自体、纏っているものはなかなか染まりにくい素材のものですから。しかしこのアルバムはやはり他のものと比べて異色。

小林武史といえば、みなさんにとってはどの音楽が浮かびますか?
サザンでしょうか、ミスチルでしょうか。それともキョンキョンの「あなたに会えてよかった」でしょうか。
私は断然My Little LoverAKKOを凝視しつつキーボードを弾いていた、あの姿の小林武史
小林武史氏に関して、サザンの桑田さんがこんなことを言っています。
「レコーディングの際に、バンドメンバーではなく小林一人に頼りすぎてしまうことから「あいつは危ないヤツだとわかった」と」
ある意味すごい評価です。

小林武史がプロデュース業に関してラジオで言った言葉がこちら


「プロデュースというのは、例えばだれかが肩が凝ってると、自分はツボを押してあげて血行をよくしてそのアーティスト本来の良さを引き出す作業のようなものだと思います。ただ、『また凝ったんですよ』としょっちゅう言われるとこっちも『またかよ』ってなりますけど」


果たしてエレカシの、宮本さんの凝りは収まったのか。

1.部屋
2.女神になって
3.面影
4.暑中見舞 -憂鬱な午後-
5.普通の日々
(作詞:宮本浩次小林武史
6.かくれんぼ
(作詞:宮本浩次小林武史
7.秋 -さらば遠い夢よ-
8.真夏の革命
9.あなたのやさしさをオレは何に例えよう
10.マボロシ

「宮本くんは母性の強い女の子にしか訴えかけないから、ふつうの女の子にも聴いてもらえるラブソングを作れたらいいね」
坂西伊作さんから言われたこの言葉。
女性だからと言って全ての女性が母性が強いわけではないと思うし、男性にも母性はあると思っておりますが、すべて人の中に存在する大なり小なりの「母性」に直接訴えかけるアルバムじゃないの、これ…、というのが第一印象。
そして「ふつうの女の子」にまず薦めるとしたら、このアルバムからなのかもしれないな、という一枚。
ということは、それまでのファンのとっては好き嫌いがわかれた作品だろうなと思っています。

常々考えているのですが、宮本さんはどのくらい自分の持っている色気とか可愛らしさに通常時気が付いて過ごしているのでしょう。
よく宮本さんの有名ブランド店舖での目撃情報がSNSであがってきて笑ってしまうのですが、たぶん「宮本浩次」がダダ漏れ、かつ隠す気もなし、なのでしょう。
ちなみに福山雅治は日常生活において完全にオーラを消すそうです。ああいう方は、自分のどんな部分がカッコいいかということを詳細に分析・自覚した上で生活しているから、そんな技ができるのでしょうね。よく宝塚もご覧になっているらしいし。
先生の場合は、常にダダ漏れのような気がいたします。そこが大いなるチャームポイント。
そして、その自分ではあまりわかっていないダダ漏れ感がこのアルバムからほとばしっていると思うのですが、それが小林武史の計算の中に入っているとしたら、マジ怖いよ小林武史

僕の部屋へ来るなら地下鉄のホームを出て目印はあのレストラン
コンビニ24時間下にある 古いアパートの5階さ

絶対本当に住んでいたところだろうし、住所バレそうなほど具体的な歌詞で、もうそういうところから
大丈夫?大丈夫なの宮本さん?
と出だしから鼓動が早まります。一種の「吊り橋効果」発揮。
女子供は注意事項をよく読んでから、普段入らなくてはいけない「エレカシ部屋」に、このアルバムの場合はすんなり入ることを許されます。許すといっても、その許可を認めているのは自分自身の中にいる心の門番なので、エレカシ自体が許しているのではないということにも気づかなくてはいけません。


「女神になって」と畳みかけるような母性への直線コースにうわーん(オロオロ)となってしまいます。

今回はどの曲も本当にときめきが過ぎるのですが、やはり「普通の日々」は群を抜いている。静かな歌詞、静かな曲調、しかし「普通の日々よ」の部分の胸にせまる感じは、それがどんな場所であろうとも涙を抑えることに必死になってしまいます。
なんでだかわからないけれど、必ず泣いちゃう。そういう理屈のつかないものをエレカシは多々持っています。
人の中にある生の感情を大きくゆさぶる何か。それが苦しいし、辛いし、心地よい。

今回の野音で「秋 -さらば遠い夢よ-」を聴きました。
このアルバムの中では、なんとなくつるつると聴いてしまっていた歌でしたが、これがまた秋の野外で聴くと忘れられない曲となりました。
ラストの「マボロシ」まで、静かな時の流れ方をするアルバムで、結果、小林武史よ、ありがとう、と思っております。
そして、このアルバム、きっとエレカシのみなさんは苦労されただろうなぁとも思っています。
しかし、この内に秘めた感情を静かに表現するという形は、ここからの作品作りにかなり影響を及ぼしたのではないでしょうか。