四月の風

君に会えた四月の風

一生ついていきます「俺の道」

 

俺の道

俺の道

 

 

色で言えば赤一色。

嗅ぎ慣れない獣の臭いをたぐっていくと、そこには傷だらけの狼が一匹。
その狼に追いかけられていくも、道は一本。両側には高いコンクリートの壁。
全速力で道を走り抜けると、そこは荒野。
私を追い越した狼はすれ違いざまこう言った。
「オレ 37」
デーーーーーーッと叫びながら狼は走り抜けていく。
そしてこれが夢ではなく、現実。
アルバムを初めて聴いて、私の感想というか妄想はまずこれ。
ジャけ写が一匹狼というところからし
「寄らば叩っ斬る」という殺気すら感じる。
まあ、この感想も狂ってはおりますが、よくぞこのアルバム出したな、と。
これを売るのは難しいよな。なぜならこのアルバムには女の入る隙間がないから。
世の中の半分は女でできておりますが、その女の入る隙がない。
「宮本ーーっ、とっとと歌えーーーーっ!」と叫んでいた、
そうあの野太い声の男たちの姿がまるで見え隠れするような、そんな音。
もう、本宮ひろ志宮本浩次か。「俺の空」か「俺の道」か、ってことですよ。
それほどの男臭。
これが東芝EMI移籍後初と言われても、疑わなかったでしょう、私。
非常に統一性があり、気迫がすごい。
プロデュースが宮本さん本人だと、ここまでバンドと声の力を最大限の状態で
盤にのっけてくるのか。猛烈だわ。

こうして、まだ途中ではありますが、EMI期というものを考えると、これはかなり
バンド力の向上に貢献した時期ではなかろうかと思います。
どの時期も、それぞれの時期なりに大事だと思いますが、EMI期、面白い。


1.生命賛歌 (4:48)
音のでかさにまず驚きます。楽器も声も初っ端からでかい。
しかも歌詞の詰め込み方も激しい。
まず圧倒されます。

2.俺の道 (4:30)
どぅどぅどぅどぅっどぅどぅー どぅどぅどぅどぅっどぅどぅー
この叫びとも歌ともとれる部分が強烈。思えばこれがサビ。
この曲をオールタイムベストに入れたところに、なんというかこの歌が生まれた時期の
苦しみと焦燥感の強さを感じます。
満たされないまま
引きずりまわして歩け
唯一繰り返して歌われるこの歌詞が壮絶。

3.ハロー人生!! (4:10)
やっと聴けた、ハロー人生!!
神奈川のコンサートで、わからなかった数少ない曲のうちの1曲です。
21世紀今日現在このニッポンじゃあ、さほどオレの出番望んじゃないようだが
俺はいったい何者なんだ?という問いが切実。
たぶん、この人は本気でそう思っているから歌うんだな。
これが内にこもる人であったなら、必ずやどこかで屈折した爆発をしていたことだろう。

4.どこへ? (3:33)
この歌詞が非常に難解。
難解ではございますが、出てくる「オマエ」がもう一人の自分だとしたら
なんとなく自分の中のおさまりがいいというか、納得できるというか。
「数メートル四方の場所に太陽の光の全てを傲慢にわがもの顔で受け止めていた」
のはステージに立つもう一人の自分。
とすると、ラストの「どこへ?」のパンチがじわじわとボディに効いてきます。


5.季節はずれの男 (4:32)
遠い記憶じゃ 親に抱かれた男よ ひとり歩め
非常に好きな歌ですね。
この歌詞がまたいい。
季節はずれというのは、単に季節だけに外れているわけではなく、世間からの
はみ出しという意味もあるのでしょうか。
鳥が飛ぶように俺よ歩け
という、非常に宮本用語として重要な鳥が出てまいります。
ライバルで無き友よ さらば
男の歌だよなぁ。


6.勉強オレ (4:11)
とにかくこのタイトルがね、なんだろうと思いました、最初。
勉強しろオレ、ではなく勉強オレ。
自分におきかえてみると、仕事オレ。育児オレ。料理オレ。
なんとなくやる気になってきました。
女についての部分の歌詞がとっても興味深い。
オレ以上のオレが住んでいるとな?確かにそういうことってありますよねー。
宮本さんがいったいどんな恋愛をしてきたのかにちょっと興味がわいたりもして。


7.ラスト・ゲーム (4:50)
キリストと孔子をいきなりもってきました。
昔は天皇が親 今はアメリカが親という歌詞もすごいです。
リアルな日々にでもどこかしらカッコイイオレを探せ。これを繰り返し。
とにかく激しい自分探し。


8.覚醒(オマエに言った) (5:49)
三十七。非常に等身大というか、思ったことをそのまま表現したというか、
とりあえず私も三十七歳という年齢は経験済なので、そのむなしさをこの曲で
反芻しては具合が悪くなっています。


9.ろくでなし (4:32)
石森さんと一緒に作った歌なのですね。
歌詞の繰り返しが、「何も変わらない」という現実を強調して
見える景色は優しいのに、優しいからこそ残酷でもある。


10.オレの中の宇宙 (4:02)
宇宙というものを歌っていながら、そこには団地があり、自分の小さな部屋があり
母親の作ったご飯がある。
宇宙=隔絶 漆黒の闇なのか、輝く星はそこに見出せるのか。
こういう内面の闘いに近い歌は、苦しい。


11.ロック屋(五月雨東京) (4:52)
ここでも「俺はロック歌手」とはっきりと歌っている。
とにかくこのアルバムは、タイトルどおり、「俺の道」をはっきりとさせる意思表示のようなもの。

12.心の生贄 (3:44)
バンド初のシークレットトラック。
「あるべきでない場所へオレも乗り込んで」
「春の風はオレを舞台上に立たせた」
具体的実体験から生まれたことが想像できる曲。ぜひ生で聴いてみたい。